WRX ヒルスタートアシストについて
WRX STIも先代GRB型からヒルスタートアシスト機能が搭載されています。各メーカーで名称は違うようですが最近ではAT車にも搭載されていて、またMT車にとっては便利な機能です。今回はVAB型でのヒルスタートアシスト機能について試してみました。
WRX STIのヒルスタートアシスト機能
VAB(A)型取扱説明書には、以下の様に書かれています。
ブレーキペダルをしっかりと踏んで車両が停止した状態から、ブレーキペダルを離すと1~2秒間ブレーキがかかった状態になります。クラッチを繋ぐとブレーキが解除されます。
この「ブレーキがかかった状態」の内にアクセルを踏んでクラッチを繋ぎ車を発進させれば、坂道でも車が後退しない事になります。また「下り坂での後退時」にもヒルスタートアシスト機能が作動します。ただし作動には条件があります。
上り坂での前進時、チェンジレバーが「R」以外
下り坂での後退時、チェンジレバーが「R」
上記の条件の逆、つまり上り坂でチェンジレバーを「R」に入れている時、下り坂でチェンジレバーが「R」以外ではヒルスタートアシスト機能は作動しません。その他、ヒルスタートアシストの警告灯が点灯している(機能OFFを含む)時なども作動しません。坂が緩やかな時も作動しない時があります。
実際の様子
上り坂で下記の様な状態(条件)で動作を確認してみました。どの状態もシフトはニュートラルです。
- サイドブレーキ解除。
- フットブレーキを踏んだ状態からサイドブレーキ解除→フットブレーキ解除。
- クラッチを踏んだ状態からサイドブレーキ解除。
- クラッチ+フットブレーキを踏んだ状態からサイドブレーキ解除→フットブレーキ解除。
この時にヒルスタートアシスト機能が作動したのは「4」でした。「1」と「3」はフットブレーキを踏んでいないので機能しないのは当然なのですが、「2」は取説通りであれば作動しても良いような・・・?と思ったのですが、「クラッチを繋ぐとブレーキが解除されます」との一文があるので、「クラッチを踏んでいない=クラッチは繋がっている」という認識になっている様です。よってヒルスタートアシスト機能によるブレーキは解除状態となり、機能しなかったと思われます。
下り坂は試しませんでしたが条件は同じだと思います。また1~4のいずれの状態でも前述の条件(上り坂でシフトが「R」、下り坂で「R」以外)である時は作動しません。
※この記事・動画の内容はヒルスタートアシスト機能の作動条件を保証する物ではありません。その他の状態や状況次第で変わる事もあります。もちろんメーカーや車種によっても違います。
ヒルスタートアシスト機能の解除
ヒルスタートアシスト機能は解除(OFF)する事が出来ます。以下はVAB(A)型での方法です。
- 地面が平坦で硬く、車が安定する場所に駐車します。
- パーキングブレーキが確実にかかっていることを確認します。
- プッシュエンジンスイッチをOFFにします。
- エンジンを始動します。ABS警告灯およびVDC警告灯が消灯していることを確認します。
- VDC OFFスイッチを押し(VDC OFF表示灯が点灯)、そのまま保持します。VDC OFF表示灯が消灯するまで押し続けます(約30秒)。
- 消灯後、5秒以内にスイッチを離します。
- スイッチを離した後、2秒以内に再度VDC OFFスイッチを押します。ヒルスタートアシストOFF表示灯が点灯します。
- プッシュエンジンスイッチをOFFにします。ヒルスタートアシストが解除されます。
- エンジンを再始動し、ヒルスタートアシストOFF表示灯が点灯していることを確認して下さい。
復帰させるときは、上記1~9の手順を行ってください。復帰後は、ヒルスタートアシストOFF表示灯が消灯します。
※実際に行う時には自己責任の上、再度取扱説明書を確認して下さい。また取扱説明書にはその他の注意事項なども記載されています。
その他
ヒルスタートアシスト機能についてはあくまで補助機能なので過信は禁物です。坂道発進で後退しないと思っていても後退する場合があります。MT車を運転する上では通常の坂道発進も出来る様でないと厳しいでしょう。MT車も運転できる免許証を持っていれば1度は運転の経験がある筈なので、あまり心配や難しく考える必要も無く、結局最後は「慣れ」だと思います。
私自身はヒルスタートアシスト機能は「ON」です。坂道発進と言うよりも電子スロットルに未だに慣れません。VAB型の以前はGDB型に乗っていて電子スロットルでは無かったのですが、VABではブレーキからアクセルに踏み変えた瞬間の反応の無さ(遅さ)に違和感があります。GDBにはヒルスタートアシスト機能も無いのですが、VABでの坂道発進時にこんなに苦労したっけ?とちょっと自信が無くなりました。SIドライブのモード変更でも感覚がちょっと変わってしまうので、ヒルスタートアシスト機能は保険です。走り出してしまえば違和感はあまりありません。私の場合は隣に並んで止まっているアイドリングストップ車よりも、スタートダッシュで遅れる程のんびりゆっくり運転しているので、ちょうど良いのかもしれません。
2017年8月追記
下り坂での「後退」時のヒルスタートアシスト機能を試してみました。取説通りでした。
2019年2月追記
最初の動画で「半クラ時にアシストは効くのか?」という御質問を頂きました。クラッチを踏んでいる事が条件となっているので「効かないのでは?」と返信したのですが、色々考えている内に気になる点が幾つか出てきたので、色々試してみました。
取説ではヒルスタートアシストで坂道発進した場合、1~2秒間ブレーキが掛った状態になるとあります。さらにクラッチを繋ぐと解除されるともありますが、この「クラッチを繋ぐ」は半クラも含まれるのか?という事です。半クラ状態でも車が前進する場合はアシストが解除されないと、実際には前進出来ません。私の普段の感覚からするとヒルスタートアシストを利用した坂道発進でも、前進出来ない様な引っ掛かりは感じません。
私の車ではクラッチペダルの踏み込み側と戻り側それぞれにスイッチがあります。ヒルスタートアシストではクラッチを踏んでいる事も作動条件となっているので、当初は踏み込み側のスイッチが関係していると思っていました。実際に各スイッチがON/OFFでヒルスタートアシストがどの様に作動するのか試してみましたが、結果として踏み込み側ではなく戻り側スイッチのOFFが関係している様です。従って半クラでもヒルスタートアシストは作動しましたが、この場合はヒルスタートアシストが効いている間は前進も出来ませんでした。
しかし通常のクラッチを踏み込んだ状態(踏み込み側スイッチON)からヒルスタートアシストで坂道発進した場合は、アシストは通常よりも早く解除されている感じもします。ただ踏み込み側スイッチをコネクターから差し替えて手元で操作出来るようにしても、ヒルスタートアシストは踏み込み側スイッチのONからOFFでは解除されませんでした。結局の所、何が条件になっているのかまでは分かりませんでした。
補足
クラッチの踏み込み側スイッチは「クラッチスタートスイッチ」、戻り側スイッチは「クラッチスイッチ」という名称です。クラッチスタートスイッチはエンジン始動の際の条件となっていて、これをキャンセルする為にコネクターから手動スイッチに付け替える方も居る様です。この踏み込み側のクラッチスタートスイッチはそもそもECUに入っているのか?とも思いましたが、手動スイッチに付け替えてON/OFFするとプッシュスタートスイッチのランプが点灯/消灯します。さらに点灯の際にはスイッチONから約1秒ほどディレイが掛かっています。この様子をみるとスイッチはECUに入り、ランプ点灯(エンジンスタート可)を制御していると思われますが、配線図等を確認はしていないので正しくは分かりません。