WRX OBD2ポート(OBD2コネクター)からの電源について
これまでOBD2ポートにELM327を接続して情報取得などを行っていますが、今回は単純にOBD2ポートに含まれている電源についてです。私は普段、車両のOBD2ポートにTRUSTのインテリジェントインフォメータータッチを付けていますが、最近ではレーダー探知機による車両情報の取得や電源の取り出しにも、別売りのアダプターを使用する事で可能になってます。
OBD2ポート(コネクター)のピン内容
OBD2ポートは車両ECUとCAN通信などを行う車両診断の為の物で、16ピンのコネクターになっています。ただし16ピン全てがCAN通信などを行う為の物では無く、規格としても「空き」となっているピンがあります。
上記Wiki(英文)のOBD2コネクターについての項目で、規格として定義されているピン配列についての記載があります。1~16ピン番号の内、色が付いていない項目は「Manufacturer Discretion」となっていて、メーカーや車両独自の機能を割り当てる事が可能になっています。
定義されている項目の内、16番(ピン番号16)が「Battery voltage」となっていて、これが「バッテリー電源=常時電源」となります。
Manufacturer Discretion(メーカー裁量)
メーカーや車両独自の機能割り当てについて例えばトヨタの場合、車速信号やダイアグモード表示指示、テストモード出力指示などがある様(リンク先は日本語Wiki)です。OBD2に接続する機器で車速による自動ドアロックや、急ブレーキ時のハザードランプ点滅機能を追加する製品もありますが、これらはメーカーや車両独自の機能を使用していると思われます(詳細は不明です)。個人的には車両に対して動作系の個別命令を出すというのは怖い気がしますが。
常時電源の注意点
レーダー探知機でOBD2ポートから電源を取るにあたって、ネット上では「バッテリーあがり」についての話題を目にします。常時電源は車両のエンジンOFFやキーOFFであっても常に電源が供給されているので、機器を接続すれば車両の状態に関係無く電源が入ります。従ってレーダー探知機が見た目上OFFとなっていても待機電力によって少なからずバッテリーが消費され、その結果バッテリーが上がってしまいます。
ただしこれはOBD2ポートから常時電源を取った事が理由では無く、その他の配線やヒューズボックスから常時電源を取っても同じです。レーダー探知機を発売している各メーカーのOBD2アダプター適合表では、長時間車両を使用しない場合はOBD2アダプターを外す様にとの注意書きもあります。
バッテリー上がりを回避するには
バッテリー上がりを回避するには単純にOBD2アダプターを使用せずに、付属のプラグコードを使用する事です。車両のプラグソケット(シガーソケット)は常時電源ではなく「アクセサリー電源(ACC)」で、キー位置がOFFであれば電源は供給されません(一部例外車あり)。とは言え、OBD2アダプターを使用する目的としては車両情報の取得もあるので、OBD2アダプターを使用しないという選択も難しい場合があるかと思います。
OBD2による車両情報の取得を維持しつつ、常時電源ではなくアクセサリー電源を使用したいのであれば、OBD2アダプターに加えて延長や分岐ケーブルを別途購入し、レーダー探知機を接続するコネクターの16番ピンに、別の配線やヒューズから取り出したアクセサリー電源(またはイグニッション電源)を接続する方法があります。くれぐれも車両OBD2ポート側に供給しない様に。
バラ線の延長や分岐ケーブルってあるのかと探したら、上記の様な製品が既にありました。分岐されているコネクターの片方で16番ピンの配線にギボシ端子が付けられています。本当は分岐ではなく単純に延長が欲しい所ですが。またケーブル途中にスイッチが付いた製品もありますが、これはスイッチの設置が難しい気がします。
※上記バッテリー上がりの回避方法としては、全てのレーダー探知機やその他の製品、及び車両で可能という事ではありません。各製品や車両での確認が必要です。また購入や使用は自己判断と自己責任の下でお願い致します。メーカーや車両によってはOBD2ポート自体を使用しないように案内している場合もあります。
余談
ここではレーダー探知機の常時電源使用によるバッテリー上がりについて書きましたが、カーナビなどでも常時電源は使用しています。カーナビでバッテリー上がりという話はあまり聞いた事が無いのですが、そもそも車両自体もキーOFFであってもバッテリーは消費しています。単純にレーダー探知機の待機電力が大きいと言う事でしょうか。
私の車両にはカーナビやレーダー探知機の他、先のOBD2にTRUSTのインフォメータータッチ、同じくTRUSTでブーストメーター代わりのプロフェック、A’PEXiのDIN3メーターなどをあれこれと付けています。レーダー探知機とプロフェックでは常時電源は使用していませんが、DIN3メーターでは使用しています。私は週に1、2回しか車に乗らず最長で3週間ほど乗らなかった事もありますが、バッテリー上がりを経験した事はありません。
WRX(VAB-A)のOBD2ポート
ここから私のWRX(VAB-A)についてです。TRUSTのインフォメータータッチもOBD2ポートに接続していますが、キーOFFでインフォメータータッチもOFFになっています。ただし通常インフォメータータッチでは、別途アクセサリー電源の配線も行うようになっているので、電源自体はアクセサリー電源を使用している形です。
しかし私の車両ではアクセサリー電源の配線は行わずに、OBD2ポート側の配線へギボシ端子で接続する形になっています。当初はOBD2ポート16番ピンの常時電源を使用しつつ、何か別の信号で車両のキーOFFを検出しているのかと思っていましたが、今回改めて調べてみると「Manufacturer Discretion」となっている8番ピンにイグニッション電源が来ている様です。先のWiki(英文)の8番の項目にも「Subaru: Ignition+」と書かれています(※Wikiが更新され、Subaruの記載が無くなってしまいました)。イグニッション電源はエンジン始動時からON(キーでエンジンを掛けない状態も含む)、キーOFFでOFFになります。
確認
実際に確認してみます。上記はインフォメータータッチのケーブルで数本の配線がギボシ端子になっています。まずは接続しているギボシ端子が、OBD2コネクターの何番ピンなのかを調べます。ギボシ端子にテスターの一方を当てておきます。
念の為、ピン番号についてはテスターを当てる前に、別の件で車に持ち込んでいたELM327の製品を見て、刻印されている番号を確認します。
車両からOBD2コネクターを外します。インフォメータータッチのコネクターも16ピン全てが配線されている訳では無く、4~8と14、16だけです。8番ピンにテスターのもう一方を当てると通電しました。8番ピンを電源として利用している事が確認出来ました。
次に車両側の8番ピンを確認します。8番ピンにテスターの一方を当て、もう一方は車両の金属部分(アース)に当てます。キーOFF状態では0Vですが(上記上側)、キースイッチでイグニッション電源まで入れると13V程度となりました(上記下側)。
一応16番ピンも確認すると、こちらはキーの状態に関わらず常に電源が来ています。
またこのブログを書いている中で、撮影していた写真を見て気が付きましたが、車両側のOBD2ポートも必要なピンしか用意されていません。上記写真では4~8と14、16だけでちょうどインフォメータータッチと同じになっています。よくよく見ればピン番号の刻印もありました(黄丸内)。※ピンの状態はあくまで私の車両で見た限りです。
補足
ただし全てのスバル車でOBD2ポートの8番に、イグニッション電源が来ているとは限りません。インフォメータータッチの取扱説明書にも、接続方法として「一部のスバル車」と記載されています。また日産車も同様の接続方法になっています(日産にはNON-OBDという例外あり)。
一般社団法人佐賀県自動車整備振興会の青年部にある「青年部資料」ページに、国内メーカー別のOBD2診断コネクタ配列表(リンク先はpdf)があります(サイトが更新され、見られなくなりました。ココにアーカイブ(?)として保存されていますが、扱いについては自己責任の上で)。ただし配列表のスバルでは8番ピンは特に何も記載されていません。これはやはりイグニッション電源が「一部のスバル車」という事を表していそうです。日産は確かにIGN(イグニッション)となっていますが、ダイハツとホンダの16番ピンが「IGN」になっているのは、その通りなのでしょうか?その通りであれば、ダイハツとホンダに関してはバッテリー上がりの心配は無さそうです。
トヨタや日産は「Manufacturer Discretion」として多くの機能が割り当てられている事も分かります。また「自己診断接続箇所」という記載もありますが、これはピンを短絡する事でメーター内部のトリップメーターなどで、故障コード(DTC)を表示出来る簡易機能です。
※同じメーカーの車両でも配列表通りとは限らないので注意が必要です。またテスターや短絡線の接続を誤ると、車両故障に繋がります。むやみに触れない事をお勧めします。
その他
という事で、一部のスバル車と日産車(NON-OBD以外)ではOBD2ポートから常時電源の他、イグニッション電源も取れる事になります。従ってレーダー探知機のOBD2アダプターでバッテリー上がりを回避する方法としても、16番ピンの配線から8番ピンの配線に接続を変えるという方法も考えられます。ただしOBD2アダプターでは使用しない8番ピンは入っていない可能性が高そうなので、やはり延長や分岐ケーブルの配線を繋ぎ替える作業が必要かと思います。
※電源の取り出しに際し、大きな消費電力となる機器や幾つもの機器への接続は行わない事、また念の為に接続する機器までの間に適したヒューズを入れる事をお勧めします。
のれんわけハーネスや室内及びエンジンルームのヒューズからの電源取り出しについては、それぞれ下記記事を見て下さい。
また分岐ケーブルによるOBD2ポートへの機器接続については下記記事を見て下さい。
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注記
- OBD2の仕様は各メーカーや車両で異なる部分があります。メーカーや車両によってはアフターマーケット製品による利用を推奨していない場合や、利用した場合による不具合発生の可能性を示している事があります。
- このブログ内で書いている内容はあくまで私の車両、私の利用する製品や機器での場合です。他メーカーや他の車両をはじめ、同じメーカーの車両または製品、機器であっても記事内容の保証、責任を負う事は出来ません。
- 記事内で紹介している製品や、その他の類似製品を購入・利用する場合はそのメーカーや購入先で、利用する車両などへの適合を確認し、自己判断と自己責任の下で利用して下さい。
- OBD2やELM327、その他記事内容について個別の問合せや依頼を頂いても回答する事は出来ませんので、予め御了承下さい。
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