WRX micro:bitを車両で使う その19 ELM327の車両との通信を確認する
シリアル通信におけるRS232C通信については、TTLコンバーターを使用する事でmicro:bitとELM327間の通信は一応行う事が出来ました。今回は実際に車両のOBD2ポートにELM327を接続し、micro:bitの情報取得命令に対して、車両からの応答をLCDパネルで表示出来るか確認してみます。
micro:bitでのTTLコンバーターを使用したRS232C接続については下記記事を見て下さい。
LCDパネルについて
先にmicro:bitで利用するLCDパネルについて補足します。購入したLCDパネルはkeyestudioの「2004 I2C Module(20文字×4行)」で、メーカーが案内している拡張機能では正式にサポートはされていません。「1602 I2C Module(16文字×2行)」はサポートしていますが2004はあくまで「互換性あり」なので、私が試した限りでは1行目が16文字までしか表示されませんでした。
そこで別メーカーが1602用に出している拡張機能では2004もサポートしている様子で、実際に利用してみても1行目の表示に問題は無かったので、現在はこちらの拡張機能を使用しています。
送信するデータ
今回micro:bitからELM327に送信するデータは、Aボタンで車両のエンジン回転数取得(010C)、Bボタンで直前に行ったOBD2への情報取得の再実行(0D:改行コード)、A+BボタンでOBD2ポートの16番ピンに供給されている車両常時電源の電圧取得(ATRV)の3つです。Aボタンでエンジン回転数を取得してからBボタンを押すと、再度エンジン回転数を取得する事になりますが、繰り返しAボタンを押してもエンジン回転数は取得出来ます。Bボタンでの場合は送受信するデータ量が異なるだけです。また電圧取得に対してはOBD2への情報取得ではなく、ELM327内での処理です。
ELM327に送信するデータでELM327内で処理するデータは頭に「AT」が付き、OBD2へ情報取得を行うデータは数値(サービスコード)から始まります。micro:bitから送信する場合も以前にPLCで行っていた時と基本的には全く同じです。ただしmicro:bitでは「1行書き出す」というブロックを使用すると、最後に改行コードが付け加えられるので、PLCの時に行っていた改行を表す16進数の文字コード「0D」は不要になります。
micro:bitのプログラムと通信結果
1回目
最初は上記の様なプログラムを組みました。LCDもこの時はまだkeyestudioで案内されている拡張機能(2004互換)を使用しています。LCDの4行を上手く使う為に改行を行う機能も付けています。
このプログラムで実際に、車両のOBD2ポートに接続したELM327へデータを送信してみた所、上記の様に「NO DATA」となってしまいました。室内でRS232Cの接続を行った際にはちゃんと「UNABLE TO CONNECT」となり、車両に対しては接続に行っているので腑に落ちない結果です。ちなみにELM327から受信したデータは「変数」を作り、バッファから文字列として一旦「変数」に代入した上でLCDに表示しています。「NO DATA」という事は、何も入っていない事になります(送信時にはクリアする)。
ただし何度か試していると、上記の様に「41 0C 0A F4」とデータが表示されました。これは正しいデータでエンジン回転数となる16進数「0AF4」は10進数で「2804」、OBD2の規格による計算式で4で割ると「701」でアイドリング状態だった実際の車両のエンジン回転数に一致します。
しかし室内でRS232Cの接続を行った際も同様でしたが、「UNABLE TO CONNECT」の前に「searching…」が無かったり、今回も本来はmicro:bitから送信した「010C」を最初にそのまま返信してくる表示がありません。やはりmicro:bit側でデータの取りこぼしがある様子です。
さらに何度か試している内に、今度は上記の様にまるでデタラメな内容が表示されてしまいました。根本的に何か問題がある様です。
2回目
※上記プログラムでLCDパネルのI2Cアドレスが「27」になっていますが、正しくは「39」です。16進数にすると「0x27」になります。ただしI2C通信用のICが「PFC8574T」は39(0x27)、「PFC8574AT」は69(0x3f)になります。
プログラムを上記の様に変更しました。LCDの拡張機能も別メーカーの物に変更しています。改行を行う余計な機能はやめ、代わりに受信バッファーのサイズをLCDで表示出来る最大(20×4=80)にしてみました。さらに1回目のプログラムではデータの受信(読み取る)からLCDの表示まで「ずっと」のブロックで行っていましたが、これを「>」を読み取った時のタイミングで行う事にしました。
上記ではELM327は車両OBD2ポートに接続していますが、エンジンは始動しておらず常時電源のみの状態です。室内で試した状態と同じですが、今回は「010C」の返信から「searching…」も表示されています。文字化けした様な謎の記号がありますが、これはELM327から送信される「0D」の改行です。LCDパネルではこの様に表示され、改行も行われません(ELM327への設定で改行無しにも出来ます)。
続いてエンジンを始動してAボタンによる繰り返しの「010C」の送信に対しても、ちゃんと「010C」とその後のデータも毎回表示されました。各データの表示位置も変わらないので、必要なデータの抜き出しも出来そうです。
しかし「0D」による再実行は「NO DATA」になってしまいました。これは「0D」を文字列で送信(しかも「1行書き出す」ブロックなので、さらに改行をプラス)してしまっていたので明らかに間違いです。「0D」は改行(CR)を表す16進数の文字コードなので定数(数値)として送信する必要があります。
やはりmicro:bitはRaspberryPiなどと比較すると非力なので、シリアル通信やLCDパネルとの通信を同時に行いながら、「ずっと」のブロックによる連続の処理は荷が重い印象です。ELM327との繰り返しの送受信も、どの程度の頻度まで可能なのか不明です(あまり期待も出来ませんが)。
ちなみに「ATRV」を送信した結果です。
その他
とりあえず、車両OBD2からエンジン回転数のデータが受信出来て、必要なデータの位置も一定で得られる事が確認出来ました。次回はこのデータから実際に回転数を計算するプログラムを考える予定ですが、PLCの時も少々悩んだ点であり、micro:bitでどうやって処理させるのか、そもそも可能なのか?という点が課題になります。JavaScriptやMicroPythonでプログラムを書けば可能なのでしょうけれど、Microsoft MakeCodeのブロックで何とか実現したい所です。・・・私はそもそもプログラム言語は分かりません。
さらにメモリー容量も少ないので、プログラムの大きさにも制限が出て来てしまうかもしれません。micro:bitでBluetoothとLCDパネルの拡張機能を同時に使用すると、メモリーオーバーのエラーが出てしまいます(本体LEDに「020」のエラー表示)。そうなった場合はまたmicro:bitを2台使い、無線機能で役割分担する必要があります。
micro:bit 新バージョン「2.0」について
2020年11月25日より、Micro:bit本体の新バージョン「2.0」が発売になっています。従ってこれまでの古いmicro:bitを使用した記事(~その24)と新しいmicro:bitでは記事内容に相違がある場合があります。ただしこれまでのプログラムは基本的には新しいmicro:bitでも動作し、古いmicro:bitも引き続き使用する事が可能です(ハード的に新たに追加された機能は、拡張ボード等が必要ですが)。
なお新しいmicro:bitについては実際に1つ購入し、micro:bit関連記事「その25」から扱っています。
2022年4月追記
2021年12月にmicro:bit本体のバージョンが「2.2」になるとのアナウンスがありましたが、「2.0」との機能上の違いは無いとされています。
「micro:bit」関連記事
以下は「micro:bit」タグの記事一覧です(投稿順)。現在の記事とこれ以降に投稿した記事も含みます。「その24」までの記事ではmicro:bit本体のバージョン「1.5」を使用しています。
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- WRX micro:bitを車両で使う その1 micro:bitの購入
- WRX micro:bitを車両で使う その2 Microsot MakeCodeとスマホ用アプリ
- WRX micro:bitを車両で使う その3 micro:bitの仕様と購入したブレイクアウトボード
- WRX micro:bitを車両で使う その4 本体ファームウェアの更新とWebUSB
- WRX micro:bitを車両で使う その5 無線機能の利用
- WRX micro:bitを車両で使う その6 方位センサーの利用
- WRX micro:bitを車両で使う その7 加速度センサーの利用
- WRX micro:bitを車両で使う その8 micro:bitからSIドライブのモード切替
- WRX micro:bitを車両で使う その9 サーボモーターの利用(準備編)
- WRX micro:bitを車両で使う その10 サーボモーターの利用(動作編)
- WRX micro:bitを車両で使う その11 可動式雲台を作る(2軸編)
- WRX micro:bitを車両で使う その12 可動式雲台を作る(1軸編)
- WRX micro:bitを車両で使う その13 連続回転サーボモーターの利用
- WRX micro:bitを車両で使う その14 Bluetoothでスマホから操作(データ受信)を行う
- WRX micro:bitを車両で使う その15 LCDパネル(I2C LCD1602・2004)の利用
- WRX micro:bitを車両で使う その16 シリアル通信(RS232C)を行う
- WRX micro:bitを車両で使う その17 光センサーと温度センサーの利用
- WRX micro:bitを車両で使う その18 LEDのフォントとスクロールスピードを変える
- WRX micro:bitを車両で使う その19 ELM327の車両との通信を確認する
- WRX micro:bitを車両で使う その20 アスキーコード16進数から数値10進数への変換
- WRX micro:bitを車両で使う その21 車両からエンジン回転数を得る
- WRX micro:bitを車両で使う その22 7セグメントLEDの利用(TM1637ドライバ)
- WRX micro:bitを車両で使う その23 DCモーターを制御する(TB6612FNG・DRV8833)
- WRX micro:bitを車両で使う その24 ステッピングモーターを制御する(ULN2003ドライバ)
- WRX micro:bitを車両で使う その25 micro:bit バージョン2.0を購入(2021年12月 v2.2アナウンスあり)
- WRX micro:bitを車両で使う その26 バージョン2.0で追加されたMakeCodeブロック
- WRX micro:bitを車両で使う その27 バージョン2.0の初期状態と追加された機能
- WRX micro:bitを車両で使う その28 新バージョン(v2.0)のI2C通信
- WRX micro:bitを車両で使う その29 環境モニターを作る(気温・気圧・湿度編)
- WRX micro:bitを車両で使う その30 環境モニターを作る(二酸化炭素・有機化合物編)
- WRX micro:bitを車両で使う その31 環境モニターを作る(LCD表示・動作確認編)
- WRX micro:bitを車両で使う その32 環境モニターを作る(RTCモジュール追加編)
- WRX micro:bitを車両で使う その33 環境モニターを作る(ロギングモジュール追加編)
- WRX micro:bitを車両で使う その34 環境モニターを作る(ログデータ記録編)
- WRX micro:bitを車両で使う その35 車内のCO2濃度と換気について
- WRX micro:bitを車両で使う その36 新バージョン(v2.0)でのI2C通信の問題解決
- WRX micro:bitを車両で使う その37 Microsoft MakeCodeの新バージョン(v4)と新機能データロガー
- WRX micro:bitを車両で使う その38 mp3音声ファイルの再生(DFPlayer Mini)
- WRX micro:bitを車両で使う その39 車速パルス信号から速度を計算する
- WRX micro:bitを車両で使う その40 フルカラーLED(WS2812B)でメーターを作る
- WRX micro:bitを車両で使う その41 フルカラーLEDマトリックス(WS2812B)で時計を作る
- WRX micro:bitを車両で使う その42 フルカラーLEDマトリックス(WS2812B)でピクセルアートアニメーションを作る
「micro:bit+プラレール」も始めました。
その他
FA用PLCとELM327を使用した「OBD2」関連の記事は以下の記事から始まります。
注記
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